シャフトの硬さ・フレックス(振動数)

シャフトの硬さ

シャフトの硬さを示す数値には、下記の3種類があります。

1.振動数

シャフトの手元側を固定し、先端側におもりを付けてシャフトを振動させ、1分間にシャフトが何回振動するかを測定したものです。振動数の数値が大きいほど、シャフトが硬いことを示し、振動数の数値が小さいほど、シャフトが軟らかいことを示します。

2.センターフレックスの数値

先端側と手元側を固定し、シャフト中央部分を山なりに反らせ、シャフトが元に戻ろうとする力を測定します。数値はキログラムで表され、センターフレックスの数値が大きいほど、シャフトが硬いことを示し、センターフレックスの数値が小さいほど、シャフトが軟らかいことを示します。

3.デフレクション(たわみ)の数値

手元側を固定し、先端におもりをつけ、シャフトが何mm下がったかを測定します。デフレクションの数値が小さいほど、シャフトが硬いことを示し、デフレクションの数値が大きいほど、シャフトが軟らかいことを示します。

この3つの数値の中で、プレイヤーがシャフトから感じる硬さ・軟らかさの感覚に最も近い数値が振動数です。


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ゴルフクラブの振動数とは

ゴルフクラブの振動数は、下の写真のような機械で測定します。グリップ側を固定し、ヘッド側を引っ張って手を離し、ビュンビュンと振動させます。そして、1分間にクラブが何回振動するかを測定したものが、振動数です。

ゴルフクラブの振動数計

dummy_for_ads硬いシャフトが装着されたクラブは、速い速度で振動するため、振動数の数値は大きくなります。軟らかいシャフトが装着されたクラブは、ゆっくりと振動するため、振動数の数値は小さくなります。






シャフトのフレックスと振動数の関係

R/S/Xは当てになりません

シャフトの硬さを示すものとして、誰もが真っ先に思い浮かべるのは、フレックス(R/S/Xなど)ですね。しかし、驚いたことにフレックスは業界で統一した基準がないのです。フレックスは、各メーカーの基準が曖昧なので、シャフトの硬さを示す絶対的な基準にはなり得ません。

「アスリートモデルのRがアベレージモデルのSよりも硬い」というようなことは、よくあることです。また、また、近年はメーカーがシャフトをどんどん軟らかくする傾向にあり、レディースクラブなみに軟らかい(振動数が小さい)「S」シャフトなどが実在します。

振動数なら嘘をつきません

振動数は、シャフトの硬さを示す確かな基準になり得ます。シャフトが硬ければ、その分だけ振動数の数値が大きくなり、シャフトが軟らかければ、その分だけ振動数の数値が小さくなります。

稀に雑誌などで「振動数はシャフトの手元側の硬さを示すものだ」と書かれているのを目にすることがあります。これは物理学的に完全な誤解です。クラブの振動は波であり、波のエネルギーはシャフトの手元から先端まで伝搬しますので、振動数はシャフト全体の硬さを示します。






振動数フローの重要性

ゴルフクラブの適正な振動数フローとは

振動数は、ゴルフクラブの長さとセットで考える必要があります。下のグラフで、縦軸は振動数、横軸は長さ、紺色のドットはアイアン、ピンク色のドットは、ユーティリティー、フェアウェイウッド、ドライバーを示します。

適正な振動数フロー

ゴルフクラブの長さと振動数の関係をグラフにした時に、適正な振動数フローのクラブセットでは、ゴルフクラブが長くなれば長くなるほど、振動数の数値は規則正しく小さくなっていきます。

下のリンクもご参考になさって下さい。クリックするとエクセルファイルをダウンロードできます。ファイルの中に『振動数のグラフ』というタブがありますのでご参照ください。クラブセットの振動数と長さがマッチしているとこのようなグラフになります。この例ではアイアンシャフトは N.S.Pro950GH(S) をモデルにしています。

 

不適正な振動数フローのクラブセットとは

対照的に、不適正な振動数フローのクラブセットでは、ドットが不規則にプロットされます。例えば、下のグラフは、ウッドの振動数が小さすぎたり、番手間で数値が逆転していたりします。

不適正な振動数フロー

下記のリンクもご参考になさってください。ファイルをダウンロードして『振動数のグラフ』をご参照ください。実際、ゴルフクラブ数値.comで測定したお客様の振動数フローは、このようになっているものが多かったです。前項のファイル『良いクラブセットの例』と比べてみると、分かりやすいと思います。なお、この例でもアイアンシャフトは N.S.Pro950GH(S) をモデルにしています。

 

不適正な振動数フローのクラブセットの弊害

不適正な振動数フローのクラブセットの弊害は、スイングテンポに決定的な悪影響をおよぼすことです。これを理解するために、スイング中のシャフトの振動(しなり)について、ご説明します。

スイングにおけるシャフトの挙動

ゴルフのスイングにおいて、シャフトはしなります。シャフトのしなり方が判りやすいように、写真に赤で補助線を入れました。トップ直前まで真っ直ぐだったシャフトは、切り返しの直後から、左写真のようにしなり始めます。そして、ダウンスイングの初期の間、シャフトはさらに大きくしなっていきます。

その後、ダウンスイングの中間付近の「リリース」のタイミングを境に、シャフトの「しなり戻り」が始まります。そして、インパクト直前では右写真のように、切り返し直後にしなった方向とは逆方向にシャフトがしなります。

ゴルフのスイング中のシャフトの「しなり」と「しなり戻り」の挙動は、必ずこうなります。つまり、トップからインパクトにかけて、ゴルフクラブは一往復の4分の3だけ振動する訳です。振動数の数値は、シャフトがある一方向にしなって、その反対側にしなり戻るまでの時間の関数です。従いまして、振動数は、切り返しからインパクトまでのテンポを間接的に示す数値と言えます。

振動数フローが不適正だと何が起こる?

プレイヤーは、シャフトの「しなり」と「しなり戻り」のテンポを敏感に感知しながら、スイングを行ってしまいます。素早くしなり戻るクラブを振ったときには、素早いテンポのスイングをクラブに強いられ、ゆっくりしなり戻るクラブを振ったときには、ゆっくりとしたテンポのスイングをクラブに強いられてしまうのです。

振動数が、クラブごとに不規則に変化していると、何が起きるでしょうか? キャディバック内の異なるクラブを振る度に、不規則な振動数を持つクラブ達は、不規則に異なるスイングテンポをプレイヤーに強いるのです。ラウンド中のスイングテンポは不規則な振動数を持つクラブ達によって滅茶苦茶に狂わされ、結果的にミスショットを量産してしまうのです。

練習場では上手く打てるのに、コースでは上手く打てないという理由の一つは、実はこれです。練習場では、同じクラブを連続して打てるので、5~6球打てば、人間の優れた運動能力により、そのクラブのテンポに身体が順応できてしまいます。だから、練習場ではナイスショットが出るのです。

しかし、残念なことに、人間の運動能力は、1回の素振りだけでそのクラブのテンポに順応できるほど高くはないのです。コースでは、同じクラブを連続して打つことは稀ですし、本番のショットの前に素振りを5回も6回もすることも稀です(これをすると同伴プレイヤーに冷たい目で見られますから)。

重要なのはクラブセットの調和

フルショットをするクラブがキャディバッグの中に12本あったとしたら、最も大切なことは、その12本の振動数がオーケストラの楽器のように調和していることです。「6本の振動数は自分のスイングテンポに完璧にマッチしているが、 残りの6本の振動数はバラバラである」という状態よりは、「12本全て、自分のスイングテンポにはマッチしていないが、その12本の間では振動数が完璧に調和している」という状態の方が百倍良いです。

練習場でクラブを持ち替えると3~4球はミスショットが続くという方や、練習場では上手く打てるのにコースでは上手く打てないという方は、クラブセットの振動数が不協和音を奏でている可能性が高いです。

適正な振動数フローのクラブセットを持つメリット

適正な振動数フローと適正な重量フローは、ゴルフクラブの数値の中で最も重要です。振動数の数値が規則正しくフローしているクラブセットを使っていれば、どのクラブを握ったときも、自然なテンポでスイングすることが可能になり、確実にナイスショットの確立が増えます。

また、適正な振動数フローのクラブセットで練習することにより、練習がより効果的となり、短期間で上達することが可能となるのです。


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振動数帯別の分類

ゴルフクラブ数値.comでは、下記のグラフのように、ゴルフクラブを7つの振動数帯に分類しています。

  • 1:超硬い
  • 2:かなり硬い
  • 3:やや硬い
  • 4:平均的
  • 5:やや軟らかい
  • 6:かなり軟らかい
  • 7:超軟らかい

アイアン、ユーティリティー、フェアウェイウッド、ドライバーの全てを同じ振動数帯か、せいぜい一つ隣りの振動数帯の中で統一すれば、適正な振動数フローのクラブセットになります。

振動数フロー

グラフは、アイアンシャフトがダイナミック・ゴールドS200の場合とN.S.Pro950GH(S)の場合、それぞれを例に取り、適正な振動数フローを描いてみたものです。アイアンシャフトで何を使っているかによって、ドライバー、FW、UTの適正な長さと振動数がどのぐらいなのか、おおよそ見えてきます。






適正な振動数の選び方

ヘッドスピードによる大まかな目安は以下の通りです。

  • ドライバーのヘッドスピードが40m/sであれば「4.平均的」(真ん中のブルーのゾーン)
  • ドライバーのヘッドスピードが50m/sであれば「1.超硬い」(一番上のグレーのゾーン)
  • ドライバーのヘッドスピードが30m/sであれば「7.超軟らかい」(一番下のレッドのゾーン)

上記に加えて、スイングテンポが早めの方は、やや大きめの振動数、スイングテンポがゆったりの方は、やや小さめの振動数が合います。

アイアンのスチールシャフトの振動数の選び方

市販のアイアンに装着されているスチールシャフトは、トゥルーテンパー社の「ダイナミック・ゴールド」という重量スチールシャフトと、日本シャフト社の「N.S.Pro950GH」という軽量スチールシャフト、この2種類のシャフトでほぼ寡占状態です。それぞれのシャフトの各フレックスごとの平均的な振動数(5番アイアン・38インチ)は、下表をご参照下さい。

シャフトメーカー モデル フレックス 振動数 当サイトの分類
トゥルーテンパー ダイナミックゴールド X100 340 cpm 1.超硬い
S200 327 cpm 2.かなり硬い
R300 311 cpm 4.平均的
日本シャフト N.S.Pro950GH S 314 cpm 3.やや硬い
R 302 cpm 4.平均的

市販品は上記の2シャフトで寡占状態ですが、上記2シャフト以外にも多数のアイアン用シャフトがあります。主要なスチールシャフトの振動数は、ゴルフクラブ数値.comのアイアンシャフト数値一覧のページで探してみてください。

スチールシャフトの製造誤差はカーボンシャフトに比べると比較的小さく、また、同じシャフトを装着したアイアンの番手間で振動数の逆転が起こることは稀です。ただし、振動数は、ヘッド重量、ヘッド形状(ネックの長さとホーゼルの深さ)、グリップの種類などによって、若干変化します。

リシャフトをする場合、「番手ずらし」と呼ばれる工法(4番アイアン用のシャフトを5番アイアンのヘッドに装着するというような工法)をとることも出来ます。この場合は振動数が5cpm程度(約半フレックス)小さくなります。「逆番手ずらし」ということもできます。この場合は振動数が5cpm程度(約半フレックス)大きくなります。ゴルフ工房さんに相談してみて下さい。






振動数と長さの関係

同じシャフトを使ってゴルフクラブを組み立てるとしても、クラブ長を何インチで仕上げるかによって、ゴルフクラブの振動数の分類は異なります。同じシャフトでも、長く仕上げるほど、振動数の分類としては実質的に硬く仕上ります。

ウッドシャフトの振動数グラフの見方

上の表のSフレックスのシャフトを例にとりますと、44インチ仕上の場合は振動数の分類は「2:かなり硬い」と「3:やや硬い(S相当)」の境界付近ですが、46インチ仕上の場合には振動数の分類が「1:超硬い」と「2:かなり硬い(X相当)」の境界付近になっています。46インチ仕上げの方が実質的に約1フレックス硬く仕上がると言うことが分かります。


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チップカットについて

当サイトではチップカットをしないでクラブを組み立てた場合の振動数を掲載しています。「チップカット」とは、シャフトをカットする際に、手元側だけでなく、先端側もカットすることを言います。

チップカットをすることにより、クラブの振動数を若干大きく(硬く)仕上げることができます。ゴルフ工房さんにリシャフトをお願いする際には、チップカットするかどうか、するなら何インチカットするのかを相談すると良いと思います。

マッチング・チェック・ツールをご活用ください。

 ゴルファーの皆さまへ

以下のエクセルファイル(マッチング・チェック・ツール)はご自由にお使い下さい。ゴルフ工房さんやゴルフショップさんとシェアして頂いても構いません。

ゴルフ工房、ゴルフショップの皆さまへ

以下のエクセルファイル(マッチング・チェック・ツール)はご自由にお使い下さい。お客さまとシェアして頂いても構いません。

 






実際のシャフトの数値

実際のゴルフクラブの数値を数値ページでご参照ください。