ゴルフクラブヘッドの重心距離とは
ゴルフクラブの重心距離とは、下の写真のように、フェース上の重心とシャフトの中心線との間の距離です。重心距離は、球の捕まりを大きく左右する数値です。重心距離と重心角の2つは、ヘッドの球の捕まりを左右する数値の中では最重要項目です。
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フェース上の重心点の測定方法
フェース上の重心点は、写真のようにして測定します。
ネック軸周り慣性モーメントとは
重心距離は、長いほど球の捕まりが悪くなります。なぜ重心距離が長いと球の捕まりが悪いのかというと、ネック軸(シャフトの中心線)を回転の中心とした場合の慣性モーメント(ネック軸周り慣性モーメント)が大きくなるからです。
慣性モーメントとは、物体の回転のさせ易さを示す数値です。慣性モーメントが大きい物体は、回転させづらいです。慣性モーメントの数値は簡易的には以下の式で表されます。
(慣性モーメント)=(重量)×(長さの2乗)
慣性モーメントは、長さの2乗に比例するため、重心距離は球の捕まりの悪さに、2乗で効いてきます。
ネック軸周り慣性モーメントをもう少し分かり易く表現してみましょう。写真のように、ヘッドを上に向け、シャフトを両掌で挟んで、ヘッドを竹トンボのように回転させる図を想像してみてください。
この時、回転させ易ければネック軸周り慣性モーメントが小さくて軽いと言うことを意味し、回転させづらければネック軸周り慣性モーメントが大きくて重いと言うことを意味します。
ターンさせづらい
ゴルフのダウンスイングにおいて、クラブヘッドはネック軸を中心にして、オープンな状態からクローズな状態にターンしていきます。フェースローテーションとも言います。ヘッドが反時計回りにターンするということです。ネック軸回り慣性モーメントが大きいと、このターンをさせまいとする慣性の力が強く働きます。このため、ネック軸周り慣性モーメントが大きいヘッド(=重心距離の長いヘッド)はターンさせづらいのです。
ヘッドの大きさと重心距離の関係
重心距離は、ヘッドの大きさとの関係が深いです。大きなヘッドほど、重心距離は長いケースが多く、小さなヘッドほど、重心距離は短いケースが多いです。ただし、中には、重量配分を工夫することによって、大型ヘッドでも短い重心距離を実現しているモデルもあります。
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市販ゴルフクラブの重心距離の平均値
市販ゴルフクラブの重心距離の平均値は、以下の通りです。
- 2010年~2012年に市販された主なドライバー271モデルの平均値・・・39.2 mm
- 2007年~2009年に市販された主な3番ウッド83モデルの平均値・・・33 mm
- 2007年~2009年に市販された主なユーティリティー56モデルの平均値・・・35 mm
- 2010年~2012年に市販された主な5番アイアン251モデルの平均値・・・37.5 mm
重心距離と重心角
ヘッドの球の捕まりを大きく左右するのは、重心距離と重心角の2つの数値です。この2つの数値の組み合わせにより、ヘッドを以下のように4タイプに分類できます。
Type1:スライサー向き
重心角が大きく、重心距離が短いため、極めて球の捕まりが良く、フッカーが持つと大変なことになりますが、スライサーには恩恵をもたらすことでしょう。別の言い方をしますと「左にミスし易いヘッド」とも言えます。特定のクラブだけが左に引っかけ易いという場合には、そのクラブのヘッドがこのType1であるという可能性もありますね。
Type2:初中級者向き
重心角が大きく、重心距離が長いため、球の捕まりは平均的です。重心距離が長いということは、ヘッドが大きめだということですから、スイートエリアも大きめで、初中級者にとって優しいタイプであると言えます。ただし、あまりにも重心距離が長いと、球の捕まりが悪くなり、スライスを誘発する場合があります。40mmを超える重心距離のヘッドは、.....私だったら買いませんね。
Type3:中上級者向き
重心角が小さく、重心距離が短いため、球の捕まりは平均的です。重心距離が短いということは、ヘッドが小さめということですから、スイートエリアも小さめです。小さなスイートエリアでも正確に打つ技術がある中上級者向けであると言えます。このタイプのクラブで特筆すべきことは、操作性が良いということです。中上級者にとっては、意図的にドローさせたりフェードさせたりすることが容易になります。
Type4:フッカー向き
重心角が小さく、重心距離が長いため、極めて球の捕まりが悪く、スライサーが持つと大変なことになりますが、フッカーには恩恵をもたらすことでしょう。別の良い方をしますと「右にミスし易いヘッド」とも言えます。このタイプのヘッドはドライバーで結構あります。ドライバーだけスライスするという場合には、もしかしたらヘッドのせいかもしれませんね。
ドライバーはスライスし、FWはスライスしない理由
多くのプレイヤーがドライバーのスライスに悩まされています。しかし、短いパー4ホールや長いパー3ホールなどで、フェアウェイウッドでティーショットした場合、大きなスライスは滅多に出ません。フェアウェイウッドがスライスしないのは理由があります。下表を見てください。
まず重心角にご注目ください。ドライバーが21.8度でフェアウェイウッドが21度です。両者ともほぼ同じぐらいですね。次に重心距離にご注目ください。フェアウェイウッドは重心距離が33mmと格段に短いですね。また、それに比例するようにネック軸周り慣性モーメントも4312g・㎝2と格段に小さいですね。重心角が同じぐらいなのに、重心距離とネック軸周り慣性モーメントが格段に小さいと言うことは、フェアウェイウッドはドライバーに比べて格段に球の捕まりが良いと言うことです。だからフェアウェイウッドはスライスしないんです。
もしドライバーとフェアウェイウッドの球の捕まりを揃えたい場合には、ドライバーの重心距離はなるべく短く(また重心角はなるべく大きく)、フェアウェイウッドの重心距離はなるべく長く(また重心角はなるべく小さく)するのが良いでしょう。
アイアンの重心距離とドライバーの重心距離
「アイアンの重心距離とドライバーの重心距離を同じにするのが良い」とまことしやかに言われていた時期がありました。これは真っ赤な嘘です。
上の表で分かりますが、アイアンの重心角はドライバーの重心角よりも格段に小さいです。つまり重心角的にはアイアンの方が球の捕まりが悪いわけです。もしアイアンの重心距離をドライバーの重心距離と同じにしてしまったら、アイアンはドライバーよりも球の捕まりが悪くなってしまいます。
アイアンの重心距離をドライバーの重心距離よりも短くした方が、アイアンとドライバーの球の捕まりが揃ってきます。
球の捕まりの詳細について
球の捕まりに関しては、捕まり指数のページも併せてご参照ください。
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実際のゴルフクラブの数値
実際のゴルフクラブの数値を数値ページでご参照ください。